INTRODUCTION

NAKED Inc.は、1997年に村松亮太郎を中心に、映像ディレクター/ライター/グラフィックデザイナー/CGデザイナーらが集まって設立されました。

当時、時代的にはデザインのデジタル化(DTP化)がようやく普及し、映像のデジタル化がようやく国内で始まりだしたころです。
まだ“モーション・グラフィックス”という言葉もなく、DRAWING AND MANUAL(ナガオカ・ケンメイ氏/菱川勢一氏ら)によって開催された『モーショングラフィックス ‘97』が日本での初出と言われています。記念すべき第一回は、企業ロゴを動かす=フライングロゴがテーマでした。
こうしたモーション・グラフィックス製作に必要不可欠なAdobe社のAfterEffects 3.0がリリースされた(ver3.0以前はAdobe名義ではなかった)のは、1995年のことでした。日本でAfterEffectsが普及し始めたのは1997年〜1998年のことです。
こうした時代背景のなか、映像/デザイン/WEBといったデジタル領域のみならず、ムービーカメラ撮影などを全て内製化してワンチームで行おうとするチームはまだ数少なく、活動そのものを説明するのにも、とても苦労した時代です。

2000年代に入って、ジョージ・ルーカスがスターウォーズ新シリーズ(Episode I~III)を制作する際に、EpisodeIIにおいては全篇フルデジタルで製作することを発表。これに併せて、ソニー製のデジタルシネマカメラCineAlta HDW-F900※1がソニー厚木テクノロジーセンターにて開発されました。brこうした流れを受け、民生用でも24P撮影が可能なカメラなども相次いで発売されるに至ります。
映像のデジタル化は当然のことながら、撮影する機材だけではなく、それを投影する機材にも影響を及ぼしました。その流れで出てきたのが高輝度DLPプロジェクターです。 Apple社のFinalCutPro(1999)を始めとする、ワークステーションではない、PCベースの編集環境も2000年代前後から整い始めます。
こうして、機材やフィルムが高価なことから「参入障壁が高い」、とされていた映像業界に、続々と若手インディペンデントのチームが参入し始めました。我々NAKEDもそのチームのひとつです。
その後、日本ではあまり馴染みのなかったアメリカのショート・フィルムを紹介しようという動きが起こり、そのままショート・フィルムを作ろうというムーブメントに移行していきました。

※1
ビデオとは異なる映画のフレームレート(24P)で撮影可能な、初の業務用ハイビジョンデジタルカメラ。このカメラを用いて撮影された「Star Wars: EpisodeII クローンの攻撃」はデジタルシネマ制作時代の幕開けとなった。(写真はHDW-F900R、出典:ソニー株式会社)

NAKEDでも数多くのショート・フィルムを制作し、海外映画祭の出品を経て、設立当時からの念願であった、長篇映画デビューを果たします。
こうして、ミュージックビデオやCM、ポスター、WEBなど、いわゆる一般的な受託の映像制作やデザイン制作と同時に、映画制作を続けていましたが、2008〜2009年ころから転機が訪れます。
まず、第一に、日本国内の映画マーケットが小さく、我々が思い描く映画制作が困難だと“体験”としてわかってきたこと、そして第二が、プロジェクターの発達による、映像の新しい可能性でした。

「これからの映像はフレームを飛び越える」

これが、当時、我々が考えた可能性でした。それをどう具現化するかの試行錯誤を経て、辿り着いたのが丸の内東京駅舎『TOKYO HIKARI VISION』です。
上演時には、予想を超える観客が殺到し、数年間自分たちが考えてきたことに、確信が持てた瞬間でもありました。
その後、東京国立博物館での『洛中洛外図屛風 舟木本「KARAKURI」』※22などの一般的な3Dプロジェクションマッピング作品と同時並行で、本格的に「Space Creative , Experience Design(空間を創り、体験をデザインする)」の具現化に取り組んできました。

※2
重要文化財である「洛中洛外図屏風 舟木本」(後に国宝に指定)をモチーフに、東京国立博物館・東洋館にて行われた3Dプロジェクションマッピング。屏風という平面の世界と、3Dの世界をどのように融合させるかを表現した作品。(特別展 「京都―洛中洛外図と障壁画の美」3Dプロジェクションマッピング「KARAKURI」2013 ©NAKED/NTV)

新江ノ島水族館で実施した『ナイトアクアリウム』※3はその具現化の第一歩といっていいでしょう。
こうして、様々な既存空間の再構築を経て、2016年1月『FLOWERS by NAKED』として、花をモチーフにゼロから空間を構築する試みをスタートしました※4
『ナイトアクアリウム』や『FLOWERS by NAKED』など一連の作品を通して、空間と体験の再構築/構築の実現に取り組んできましたが、ゴールとしたのは「都市そのもの」でした。本展は、このゴールに向けての第一歩となります。

NAKEDでは、現在の活動の向こう側に『LIFE』というキーワードを掲げています。魚や花、食事など、我々を取り巻く、そして我々自身の“LIFE”がどのようになっていくのか。巷間では2020年の大きなイベントを控え、各所で様々な取り組みが始まっていますが、その後も、我々の“LIFE”は続いていきます。

人の営為の集積が“都市”であるとき、我々の“LIFE”はどのようになっていくのか。本展は、そうした「私たちそのものへのあり方」への問いかけでもあります。

※3
実際の魚と違和感がないように映像を溶け込ませる、という基本的なARの考え方とともに、水族館全体を新しい空間に再構築する、という試みを行った。この後、全国の水族館で同様の試みが拡がっていくこととなった。(新江ノ島水族館『ナイトアクアリウム』, 2014,)

※4
デジタル/アナログ、実写/映像の区切りもなく、造作そのものもゼロから組み上げ、さらには匂いや触覚、味覚なども組み合わせた空間を生み出す、というプロジェクト。メディアアートでもあり、インスタレーションでもあり、飲食空間でもある、という新たな空間提示を目指した。(『FLOWERS by NAKED』, 2016 , NAKED Inc.)

CASE STUDIES

人の営為の集積が“都市”であるとき、我々の“LIFE”はどのようになっていくのか。
本展は、そうした「私たちそのものへのあり方」への問いかけでもあります。

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